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営農型太陽光発電とは?農地転用型太陽光発電との違いや取り組み事例も

2021.12.22

地球環境の取り組みとして、太陽光発電は最も主流です。従来の太陽光発電は、建物の屋上や屋根、もしくは敷地にそのまま取り付けることが一般的でしたが、近年ではあらゆるニーズに適した手段が多く生み出されています。

これまで、農地に太陽光発電設備を設置する方法も主流でした。しかし農地にそのまま太陽光発電設備を設置すると、農地を宅地などに転用する必要があるため、農業を維持することができません。農地転用せず、農業を維持しながら太陽光発電設備を設置したいという人に向けて新たに生み出された方法が、「営農型太陽光発電」です。

そこで今回は、営農型太陽光発電の概要や取り組みの事例、始め方を徹底的に解説します。省エネや脱炭素化など環境に配慮した事業活動に興味のある農業関係の経営者・農家関係者は、ぜひ参考にしてください。

 

1.営農型太陽光発電とは?

営農型太陽光発電とは、農地に支柱を立て、新たに生み出した上部の空間に太陽光発電設備を設置し発電する手段です。支柱を立てて農地の地面から数メートルの高さにパネルを設置するため、パネル下で営農を続けることが可能となります。「ソーラーシェアリング」とも呼ばれています。

農業と太陽光発電を両立できるため、作物の販売収入に加えて継続的な売電収入や自家消費ができ、農業経営のさらなる安定化・改善が期待できます。

 

1-1.農地転用型太陽光発電との違い

これまで農地での太陽光発電は、地面に直接太陽光発電設備を設置する「野立て設置」「野立て太陽光発電」が一般的でした。この方法は、正確に「農地転用型太陽光発電」と呼ばれます。

農地転用型太陽光発電を行うにあたり、農地は宅地などに転用しなければなりません。宅地に転用した土地は、農地として扱うことができないため、農業を行うことも不可能となります。

日本全国の食糧自給率は、数ある先進国の中でも最低レベルであることが実情です。農地が減少すれば、食糧自給率もさらに低下してしまうおそれがあります。この問題を解消すべく、営農型太陽光発電が生まれました。

営農型太陽光発電と農地転用型太陽光発電の主な違いは、下記の表を参考にしてください。

営農型太陽光発電
特徴 農地に支柱を立てて太陽光パネルを設置する
農地転用 必要なし
農業と太陽光発電の両立 できる
発電量 農地転用型に比べて少ない
農地転用型太陽光発電
特徴 農地に太陽光パネルを野立て設置する
農地転用 必要
農業と太陽光発電の両立 できない
発電量 営農型に比べて多い

営農型太陽光発電であれば、農地転用の必要がありません。そのため、農業を行いながら同土地で同時に太陽光発電を行えます。農地収入に加え、売電収入を得たり、自家消費したりすることが可能です。

営農型太陽光発電はメリットの多い発電方法ではあるものの、農地転用型に比べていくつかの注意点もあります。まず1つが、発電量です。農地転用型太陽光発電の場合、農地のすべてを太陽光発電に利用するため、一面に太陽光パネルを敷き詰めることができます。

一方で営農型太陽光発電の場合、作物がきちんと育つための光量を確保しなければならないため、太陽光パネルは一定の間隔を作って並べなければなりません。そのため、営農型太陽光発電は農地転用型太陽光発電に比べて発電量が少ないことも覚えておきましょう。

そして農地転用型太陽光発電と比べた営農型太陽光発電のもう1つの注意点が、作物の生産状況の報告を毎年義務付けられている点です。営農型太陽光発電を行うには農地の一時転用許可を得なければなりませんが、作物の生産や収入が規定を満たさなかった場合は更新許可が下りず、営農型太陽光発電を続けることができなくなってしまうおそれがあることに注意してください。

 

1-2.営農型太陽光発電の導入状況

営農型太陽光発電の設置は、2013年3月から通知が発出され、現在まで許可件数は徐々に増加傾向で推移していることが特徴です。

2013年度 96件
2015年度 373件
2017年度 327件
2019年度 661件

出典:農林水産省 「営農型太陽光発電設備設置状況等について(令和元年度末現在)」

地球環境問題への取り組みが世界中で重要視されていることもあり、今後もさらに増加するでしょう。また、営農型太陽光発電の下部農地での栽培作物には、下記のような作物が多いことも同データにて発表されています。

作物(大分類) 野菜類
作物(小分類) 白菜・小松菜・ねぎ など
件数/割合 879件/34%
作物(大分類) 観賞用植物
作物(小分類) せんりょう・さかき など
件数/割合 786件/30%
作物(大分類) 果物
作物(小分類) 柑橘類・ぶどう・柿 など
件数/割合 369件/14%

出典:農林水産省 「営農型太陽光発電設備設置状況等について(令和元年度末現在)」

全体的に、太陽光パネルによって遮光することを前提にした作物が多いことが特徴です。

 

2.営農型太陽光発電の取り組み事例3つ

営農型太陽光発電設備における設置者(代表者)は、農業者だけではありません。むしろ、営農型太陽光発電の設置者は、発電事業者が多くを占めていることが特徴です。

営農型太陽光発電の設置者の割合
発電事業者 60%(1,542件)
農業者 40%(1,046件)

出典:農林水産省 「営農型太陽光発電設備設置状況等について(令和元年度末現在)」

また、設置者によって設置の目的や取り組み方も異なります。ここでは、主に発電事業者による営農型太陽光発電の取り組み・導入事例を3つ紹介します。

 

2-1.茶栽培に導入した事例

静岡県浜松市の「特定非営利活動法人OIKOS天竜」では、高齢化などが原因で放置されていた茶畑を活用し、後継者の育成事業と新たな製品・ブランドの開発を目標として設立されました。放置された茶畑は抹茶用の茶の栽培に加え、支柱を立ててその上部にソーラーパネル設置を行い営農型太陽光発電を取り入れ、売電収入を法人活動に活用します。

2017年から約3年間の活動により、年間売電収入は約220万円となり、うち20万円は活動地域への還元や施設管理費として営農者に支払っています。栽培している茶は品質の高さが評価され、有名なお茶会にも使用されるようになりました。

出典:農林水産省「営農型太陽光発電について」

 

2-2.災害時における非常用電源として活用した事例

千葉県匝瑳市の「市民エネルギーちば株式会社」では、営農型太陽光発電・市民発電所の設立に特化した事業者です。2019年9月に発生した台風15号によって停電が続いた際、A社は地域の協議会と急遽相談し、2014年から運転している営農型太陽光発電所を、スマートフォンやパソコンを充電できる無料充電所として地域住民に向けて開放しました。

営農型太陽光発電設備から発電された電力で、無料で端末を充電できるという情報は口コミやSNSなどで瞬く間に広がり、地域住民150名程度が訪れました。

出典:農林水産省「営農型太陽光発電取組支援ガイドブック」

 

2-3.水田でのスマート農業と組み合わせた事例

香川県丸亀市の「株式会社讃岐の田んぼ」は、スマート農業の推進による生産性向上などを方針に農業経営を行う会社です。同社では農地合計面積3.7haのうち、約0.6haに営農型太陽光発電設備を設置し、スマート農業を組み合わせた取り組みを実践しています。

具体的には、農業ICTプラットフォームの導入・当プラットフォームを活用した遠隔操作自動水門、ドローンを活用した取り組みなどです。研究所や大学との共同研究も実施しており、太陽光パネルが作物に及ぼす影響や収穫量の安定化に向けたノウハウも蓄積しています。

出典:農林水産省「営農型太陽光発電取組支援ガイドブック」

 

3.営農型太陽光発電を始めるためのフロー

農業を営んでいる農地を、今よりさらに有効に活用したい人にとって、営農型太陽光発電設備はおすすめの手段です。では、営農型太陽光発電を始めるためには、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。

ここでは、営農型太陽光発電の始め方・導入方法を、フローチャート形式で簡単に紹介します。

STEP1 ●営農型太陽光発電の理解/知見者への相談/電力系統の接続確認
STEP2 ●営農計画の策定/土地状況に基づいた太陽光発電の設計・見積もり
STEP3 ●電力会社への申し込み/FIT事業計画認定申請/農地一時転用申請
STEP4 ●電力会社への工事費支払い・契約/着工
STEP5 ●営農開始/継続電力の供給開始/年次報告

営農型太陽光発電を始めるためには、農業に関する手続きと発電に関する手続きの双方が必要です。ステップごとに双方の手続きを併行しなければならないため、事前に計画を立てておくことをおすすめします。

 

3-1.営農型太陽光発電に関する国の支援策・相談先

営農型太陽光発電を導入する際は、農地法・電気事業法などの法律によりあらゆる規制・条件をクリアしなければなりません。専門的知識がなければスムーズに導入することができない可能性もあるため、専門機関からの相談・アドバイスを得ることも重要です。

営農型太陽光発電に取り組むにあたり、国はあらゆる支援メニューを提供しています。何らかの問題に悩んだときは、各分類の中から適切な問い合わせ先に相談しましょう。

分類 相談
支援メニュー (1)「営農型太陽光発電の計画や策定」に関する相談
問い合わせ先 (1)農林水産省大臣官房/環境バイオマス政策課
分類 実証・研究
支援メニュー (2)「営農型太陽光発電から発電した電気を農業に活用するための取り組み」に関する相談
(3)研究情報・アグリサーチャーに関する相談
問い合わせ先 (2)農林水産省大臣官房/環境バイオマス政策課
(3)農林水産省/農林水産技術会議事務局
分類 設備導入
支援メニュー (4)営農型太陽光発電の設備導入に関する相談
(※1)FIT制度について
(※2)脱炭素化推進事業のうち営農地での再生可能エネルギー導入
問い合わせ先 (4)(※1)経済産業省/資源エネルギー庁
(※2)環境省地球環境局/地球温暖化対策課
分類 融資
支援メニュー (5)低金利融資に関する相談
問い合わせ先 (5)経済産業省 資源エネルギー庁/新エネルギー課

出典:農林水産省「営農型太陽光発電取組支援ガイドブック」

また、上記のほかに国・地方自治体・金融機関などでも各種支援施策が提供されています。営農型太陽光発電の導入に関して悩んだ際は、各自治体・金融機関の支援策もチェックしてみてはいかがでしょうか。

 

まとめ

営農型太陽光発電は、農地に支柱を立て、新たに生み出した上部の空間に太陽光発電設備を設置し発電する手段であり、「ソーラーシェアリング」とも呼ばれています。農地転用せず、農業を維持しながら太陽光発電設備を設置したいという人におすすめです。

宅地などに転用し、野立て設置で太陽光発電を行う従来の農地転用型太陽光発電は食糧自給率の低下のおそれがあることから、2013年に生み出された比較的新たな発電方法と言えます。導入数は右肩上がりとなっており、普及が進んでいることがわかります。

営農型太陽光発電を始めるためには、農業に関する手続き・発電に関する手続きの双方が必要であり、ある程度の基礎知識が必要となります。営農型太陽光発電の導入を検討している人は、ぜひ今回の内容を参考に、段階的なCO2削減が可能となる電気の供給や、CO2削減の適切な提案・サポートを行うRE100電力株式会社にまずご相談ください。


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