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飯田哲也「RE100への途」

RE100への壁:九州電力の出力抑制

2021.08.27

九州電力が3年前(2018年10月)から始めた太陽光発電と風力発電への出力抑制が、この4月から激しさを増している。九州電力は、日本で最もVRE比率 (約20%〜2021年4月)が高く、しかも「VRE+原発比率」が高い(約70%〜2021年4月)ことが背景にある。
とはいっても、VRE比率が高々20%程度で、ここまで出力抑制されるようなら、RE100はとうていおぼつかない。九州電力でのVRE(太陽光・風力発電)の出力抑制を克服することは、日本全体から見て、 「再エネ100%」実現への試金石であり、ここでしっかりと対策を取る必要がある。

九州電力管内で太陽光発電事業を実施している事業者に調査した結果、今年4月1ヶ月間で総発電量の20%もの出力抑制が行われていたという実態が明らかになった(指定ルール)。これは、年間に換算しても総発電量の8%に相当する出力抑制であり、諸外国の事例と比較しても、異様な大きさである(下図)。このことは、九州電力の系統運用の「柔軟性」を抜本的に高めることを要請している。

 


以上を踏まえ、河野太郎行政改革大臣が設置した再生可能エネルギー規制改革タスクフォースにおいて、以下の改善提案を行った。

■直ちにできることとして

1.出力抑制への経済的補償。
出力抑制への経済的補償は大前提であり、速やかに対応される必要がある。

2.旧ルール・指定ルールの廃止
経済的補償とともに、無意味な区分を廃止すべきである。

3.電発松浦・松島火力(本州送電分)の抑制による関門連系線の運用枠拡大
じつは、電源開発が長崎県で運転している火力発電は中国電力に優先的に送電されており、それが関門連系線の運用枠を優先的に占めているため、VREが出力抑制されている時間帯も、その枠が使えないのだ。これは優先給電ルールに明らかに反している。

■早急に着手・改善すべきこと

4.石炭火力(電源I・II・III)の停止・廃止
九州電力は、出力抑制時に石炭火力を150万kWも残しているが、これはLNGを活用すればゼロにできる。

5.電発松浦・松島火力(承認電源の可能性)の早期廃炉
上記(3)の優先扱いの根拠となっている「承認電源」の対象から外しつつ、もともと2030年に廃炉予定を前倒しすべきである。

6.原発定期点検計画の見直し
4基の原発の定期点検を出力抑制が頻発する春期・秋期を外すように調整するべき。

7.連系線のさらなる活用(N-1電制見直し)
270万kW×2回線ある関門連系線は、N-1電制を厳密に守って、1回線は常時空けられている。しかし、出力抑制が頻発する春期・秋期の日中の一時的な期間は、残り1回線を活用するように、運用枠を拡張することを検討すべきである。
常時、上り(九州→本州方面)で活用されている関門連系線のもう1回線を使う事故ケース(九州電力管内での突然の需要不足)は、さらに上りの送電量を増やす場合のみであり、その場合は、オンライン制御で即座に遮断できる太陽光発電の枠内に留めれば問題ないはずである。
他方、下り(本州→九州方面)に関門連系線を活用する事故ケース(九州電力管内での突然の供給不足)に対しては、「上りでもう1回線を一時的に活用すること」に関して、何ら問題を生じない。

■抜本的な対策

8.優先給電ルールの見直し(再エネVRE最優先へ)
そもそも、メリットオーダーの原則から考えても、原発よりも再エネVREを最優先にすべきである。

9.関門連系線の増強
上記の(3)松浦・松島火力の抑制と(7)「連系線のさらなる活用」(N-1電制見直し)で当面の対応をしつつ、将来に備えて、関門連系線そのものを増強すべきである。

10.GW規模の蓄電池導入・需要側管理(DR)市場の本格大規模導入
今日、蓄電池の急速なコスト低下が進んでおり、欧米豪中では系統対策として、定置型の巨大バッテリーが急拡大している。まずは九州電力から、GW規模の蓄電池導入を進めるべきであり、容量市場で最優遇すべきである。

11.セクターカップリング(V2X、グリーン水素化)への準備
それでもなお生じるVREの出力抑制に対しては、その分をグリーン水素に活用するシステムを導入すべきである。

 

とりわけ、VREへの「無制限・無補償の出力抑制」、すなわち「指定ルール」が本年4月から全電力会社管内で適用されているが、本末転倒である。これでは、RE100や低炭素の「一丁目一番地」である太陽光発電や風力発電への投融資と事業化が停滞し、日本全体で低炭素・再エネ目標達成を困難にすることは明らかであろう。

 



飯田哲也(いいだてつなり)エネルギー・チェンジメーカー 
国内外で有数の自然エネルギー政策のパイオニアかつ社会イノベーター。
京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻修了。
東京大学先端科学技術研究センター博士課程単位取得満期退学。
ルンド大学(スウェーデン)客員研究員、21世紀のための自然エネルギー政策
ネットワーク(REN21)理事世界風力エネルギー協会アドバイザーなど国内外で
自然エネルギーに関わる営利・非営利の様々な機関・ネットワークの要職を務めつつ
国や地方自治体の審議会委員等を歴任。
「北欧のエネルギーデモクラシー」「自然エネルギー政策イノべーション」など著書多数。
1959年山口県生まれ

 

 

 

 


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