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河野太郎行革大臣の再エネ規制改革タスクフォース:農地編

2021.01.04

前号に続いて河野太郎行革大臣の再エネ規制改革タスクフォースの話だ。12月25日に開催された第2回は、農地の規制改革である(注1)[1]

委員ペーパーと「全国ご当地エネルギー協会」の立場で出席した小職の趣旨は、風力発電と営農型太陽光発電については、そもそも農地転用(農転)は不要ではないかという政策提言であった。趣旨を説明しよう。

 

■農地の膨大な可能性

まず、この10年で世界中の認識が大転換し、費用とポテンシャルと永続性と(世界中どこでもの)利用可能性の観点から、実質的に、太陽光と風力が主役になるという認識に大転換したことは、本コラムで何度も書いているとおりだ。10年前には想像もできなかったことだが、この10年で太陽光発電のコストは10分の1、風力は3分の1へと下がり、いずれももっとも安いエネルギー源となった。しかも、このコスト低下はこの先も続き、今後も倍々ゲームで拡大してゆくことで、太陽光と風力(と節電と蓄電池)で、再エネ電力100%はもちろんのこと、EV化や水素・アンモニアを介して一次エネルギーもすべて太陽光と風力で賄えるというシナリオに、世界中が変わった。

その前提で、環境省の最新調査(注2[2])に基づいて農地の可能性を見ると、あらためて日本における農地のすさまじいポテンシャルが分かる(図1)。太陽光で、日本の総電力供給量の3倍ものポテンシャルがあり、その9割が荒廃農地を含む農地が占める。風力が大型化&洋上しか出口がなく、日本での普及がなかなか進まないことを考えると、日本の再エネ100%への道のりは、省エネ・節電に加えて、供給側では太陽光への期待が大きい。すなわち、住宅の屋根と農地(耕作放棄地)への期待が極めて大きいということだ。

 

ただし、再エネ100%に向けて、太陽光発電を総発電量の3倍も、もちろん作る必要はなく、省エネ(節電)と風力で按分すれば、日本を再エネ100%に持っていくには、

・電力100%の場合なら、太陽光の拡大は、せいぜい現状の総発電量の1/3〜1/2、面積にして  太陽光30〜50万ha (300〜500TWh)

・(セクターカップリングで)一次エネルギーも含めて再エネ100%にするには、太陽光80〜150万ha  (800〜1500TWh)

というオーダーとなる。

 

■そもそも風力発電と営農型太陽光発電に「農転」は必要か?

当方からの要望のポイントは、「そもそも風力発電とソーラーシェアリングに「農転」は必要なのか?」に尽きる。

 

(風力発電について)

まず風力について、ドイツでもデンマークでも、農地こそ積極的に活用されており、立地特権さえあるくらいだ。いずれの国でも、風力発電に対して自然環境と生活環境を最優先して守る非常に厳しい土地制約があるなかで、農業と風力は共存できる、最適の立地という共通理解がある。さらに農家に地代や、場合によっては売電収入も入るというメリットもあり、積極的に農地への風力発電の立地が進められている。そこでは、日本のようにチマチマと風車タワーの部分だけの「農転」という発想はそもそもない。総体としての農業が継続されていれば問題ないという、当然かつ合理的な判断である。むしろ、EU農家所得補償すら継続されるほどだ。

ところが、日本では、事実上、禁じられており、仮に農地に風力発電を立地する場合も、わざわざ「県知事の許可」を得た上で、「風車タワーの部分だけのチマチマした農転」が求められる。何と大局を欠いた発想か。逆に、農地を風力発電に開放しないがゆえに、民家の近くや自然公園、あるいは歴史的景観を壊すような立地が行われる弊害がある。

 

(営農型太陽光発電について)

営農型太陽光発電についても、風力と全く同じ議論が成立する。営農型太陽光発電の架台の支柱部分だけを「チマチマと農転」することは、果たして必要なのか。全体として、農業が継続されているのであれば、支柱だけの農転というのは、あまりに「重箱のスミ的」な些末な形式主義ではないか。

 

■想定される懸念とその考察

前記のような荒廃農地を含む農地の膨大なポテンシャルに対して、「そもそも農転不要」とした場合、さまざまな太陽光業者が乱入してくる懸念が指摘されるだろう。とはいえ、現状維持で良いかといえば、そこには大きな問題がある。

・そもそも普及が一向に進まない。

・その障害になっている現状の農業委員会システムに依存しても、必ずしも「農業の健全さ」が維持できるわけではない

すなわち、改善は避けられない。

 

ここは、一気に門戸を開いても、懸念される問題は生じないのではないか。第1の理由は、FIT価格が大きく下がったために、太陽光はかつてのように、もはや「儲かりすぎる事業」ではなくなった。かつてのFIT30円台のときには、太陽光が儲かりすぎて営農者が農業を放棄することが、真剣に懸念された。しかし今や、FIT価格も下がり、非FITも視野に入れて進めていく時代に、農業との両立はむしろ重要になってきたと思われる。

第2に、農業委員会の関与は形骸化しているために、メリットよりもデメリットのほうが大きい。営農の継続性を担保するなら、他の手段、たとえば実態として農業が放棄されていたら、農地ではなく雑種地としての課税をするといった事後規制の方が良い。

第3に、もっと農家の自主性を尊重し信頼することが必要ではないかと考える。農業だけを見ても、さまざまな農家がいます。有機無農薬の篤農家から、大規模な工業的な農業、片手間のいい加減な農業まで、千差万別だ。ここは、農家の自主性と裁量を信頼するべきときだろう。その上で、あまりにひどい事例を、課税強化等で事後規制すればよいのではないか。

再エネ(太陽光)は「手段」に過ぎないが、しかし同時に、エネルギーは空気や水と同じように、「欠かせない手段」であり、それを原発や化石燃料に頼れない以上、もっとも可能性も蓋然性も高い太陽光に大きく依存することは避けては通れない。


[2] 環境省 令和元年度再生可能エネルギーに関するゾーニング基礎情報等の整備・公開等に関する委託業務報告書 https://www.env.go.jp/earth/report/post_2.html

 



飯田哲也(いいだてつなり)エネルギー・チェンジメーカー 
国内外で有数の自然エネルギー政策のパイオニアかつ社会イノベーター。
京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻修了。
東京大学先端科学技術研究センター博士課程単位取得満期退学。
ルンド大学(スウェーデン)客員研究員、21世紀のための自然エネルギー政策
ネットワーク(REN21)理事世界風力エネルギー協会アドバイザーなど国内外で
自然エネルギーに関わる営利・非営利の様々な機関・ネットワークの要職を務めつつ
国や地方自治体の審議会委員等を歴任。
「北欧のエネルギーデモクラシー」「自然エネルギー政策イノべーション」など著書多数。
1959年山口県生まれ


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