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飯田哲也「RE100への途」

環境省・脱炭素先行地域の執行率が低い理由 〜地域新電力と地域エネルギー会社との大きな勘違い〜

2023.12.30

2022年度から環境省が鳴り物入りで開始した「脱炭素先行地域事業」という大型事業について、少し前になるが、23年8月31日にフォローアップの結果が公表されている(注1[1])。会計検査や政治的に取り組まれている「事業仕分け」以外は、多くの場合、やりっ放しで終わることが多い国の事業の中では、こうしたフォローアップは珍しく、高く評価できる。

そのフォローアップでは、2022年度に採択された「脱炭素先行地域事業」の第1回・第2回の46事業の初年度の事業執行率が一覧されている。事業執行率とは、予算執行率ではなく、対象地域における電力需要に対する再エネと省エネによる削減率と定義されている。これによれば、どの地域も事業執行率が軒並み著しく低い。ただし、第2回目に採択された20カ所は、2022年11月の採択後にわずか半年未満の事業期間なので、事業進捗率が低いのはやむを得ない。

しかし、第1回に採択された26カ所はほぼ丸1年あったのだが、事業執行率が横浜市(28%)や北九州市(15.6%)、さいたま市(14.1%)、北海道上士幌町(12.4%)と二桁を越えるのは4地域で、他はゼロもしくは数%と総じて壊滅的だ。

[1] 環境省「脱炭素先行地域令和4年度フォローアップ」 

 

なぜ、ここまで事業進捗率が低いのか。環境省は、課題として以下の4点を上げている。

 

・系統連系に関する課題

・再エネ発電設備の設置場所等に関する課題

・離島特有の事業環境に関する課題

・事業実施体制に関する課題

 

系統連系や設置場所は、明らかに準備不足で、とくに第1回目の採択では公募から申請までが短期間であったこともあり、目立っている。第3回目あたりからは、この点は応募者に厳しく求められるようになった。

この中で、もっとも重要な点は、第4点目の「事業実施体制に関する課題」である。環境省は、その内訳として以下の5点を指摘している。
 

①取組が事業者任せになっており、選定自治体のオーナーシップ不足が懸念されるケース

②小規模な自治体において、役場の担当職員の不足が懸念されるケース

③地域エネルギー事業者が金融機関からの融資決定を受けるために想定以上の時間を要したケース

④選定後に、関係事業者との連携体制の変更が生じたケース、

⑤庁内の連携不足により事業実施スケジュールが大きく遅延したケース


このうち、③の金融機関に関する課題は、いうまでもなく重要な点だ。とはいえ、課題として挙げた環境省が、必ずしも本質的なポイントを抑えていないのではないか。「金融機関からの融資決定を受けるために想定以上の時間を要した」ことは結果としての現象にすぎない。なぜ「時間を要した」かが本当の課題なのだが、環境省には見えていないのではないか。

金融機関に関する本当の課題は、事業と金融機関とのミスマッチにある。年間10億円規模に及ぶ脱炭素先行地域事業の規模に対して、ほとんどの地域が地銀・信金に依存している。この規模の事業は、多くの地銀・信金にとっては、プロジェクトファイナンス的な融資をするには、扱う規模が大きすぎる上に、オンサイトPPAやオフサイトPPAなどの新しい手法への経験値も不足している。銀行は基本的にリスクマネー(出資)はできず、「融資」だけで対応するために、いっそう難しい状況にある。

この課題を解消してゆくため、第4回で採択された千葉県匝瑳市は、そのリスクマネーを出せる大手信託銀行も参加して地域金融機関との共同提案となっており、上述の金融機関に関する課題を解消してゆくモデルケースとなる可能性がある。

 金融機関に関する課題以上に、事業進捗率を遅延させた重大な要因は、環境省も指摘する「事業実施体制に関する課題」である。しかし、それを因数分解した上記の①〜⑤のケースを眺めると、いささか的外れで本質を外しているように思われる。自治体側の対応不足に原因を求めているようだが、そもそも自治体は定期異動で人が入れ替わる上に、他業務で極めて多忙である。そうした自治体職員や特定の自治体部署が、必ずしも専門ではないエネルギー事業開発を継続的・発展的に進めてゆくことは、公営電気事業を別にすれば、かなり無理があるのだ。

 事業実施体制に関する本質論は、地域エネルギー事業を担う「地域エネルギーハブ」を構築できているかどうかにある。「地域エネルギーハブ」とは、地域に根ざしたエネルギー事業開発〜具体的にはオンサイトPPA・オフサイトPPA、営農ソーラー事業、バイオマス熱供給、ESCOなど〜やエネルギーサービスを継続的に担える事業体、いわゆるコミュニティパワーを指す。

「地域エネルギーハブ」もしくはコミュニティパワーのルーツは、1970年代のデンマークに遡る。デンマークでの原子力論争の最中に、地域で原子力とエネルギーと環境と地域の未来を対話する場が、各地に自然発生し、その後に「地域エネルギー環境事務所」として制度化された。その後、1992年欧州全域に数百カ所と広がってゆき、地域の環境エネルギー転換の軸となった。日本も、その「地域エネルギー環境事務所」を拡げるために始まったのが、2004年と2005年の「環境省・平成のまほろば事業」であり、その結果、長野県飯田市のおひさま進歩エネルギーや岡山県備前市の備前グリーンエネルギーが誕生した。

 こうした地域で顔の見える人やチームで構成される地域エネルギーハブ(コミュニティパワー)を形成することで、地域に根ざしたエネルギー事業開発を継続的に行うことができる。顔の見える人・チームが経験を積み重ね、外には信頼のネットワークが形成されてゆくことで、継続的な発展が可能となるからだ。

ただし、多くの自治体や関係者のなかには、その役割を「地域新電力」に期待しているが、これは誤解である。地域エネルギーハブ(コミュニティパワー)の主軸は、エネルギー事業開発と所有(オーナーシップ)である。エネルギー事業の収益の大宗は所有(オーナーシップ)に存するからだ。他方、地域新電力の収益は「薄皮饅頭」のように薄い上に、電力市場体制や制度政策が未だに旧一般電気事業者に有利な状況にある現状ではリスクが大きいため、むしろ慎重になった方が良い。簡単に言えば、「地産地消」のうち、「地産」(地域コミュニティによる所有と生産)がまずは重要であり、「地消」の方は「取次ぎ」などの手段で既存の地域新電力と連携することで対応できる。あるいは、旧一電の発電所やメガソーラーなどがたまたま地域にある他者所有の「地産」をいくら「地消」しても、地域のお金は逃げるばかりだし、地域での雇用・人・信頼の成長・発展も期待できない。

  脱炭素先行地域では、私の関与した秋田県大潟村(第1回)と千葉県匝瑳市(第4回)は、それぞれ地域エネルギーハブ(コミュニティパワー)の立上げを最初に行った。大潟村の事業進捗率がゼロなのは、上述した金融機関の課題に陥ったからだが、今年度に入って地域熱供給事業やオンサイトPPA事業などが順調に進んでおり、地域エネルギーハブ(コミュニティパワー)の重要性が再認識できる。

この地域エネルギーハブ(コミュニティパワー)をどのように立ち上げるかについては、また別稿で解説したい。

 

 


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