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飯田哲也「RE100への途」

世界の再エネ急拡大から取り残される日本

2023.11.30

アラブ首長国連邦のドバイで11月30日から始まった第28回気候変動枠組条約締約国会議(COP28)での一つの気運は、2030年までに再エネを3倍増させようという目標への各国の合意だ。再エネと言っても、これから6年で3倍にできるとすれば、ほとんど太陽光発電と風力発電の2つしかない。再エネではないが、蓄電池も急速に増やすことはできる。

COP28の直前に英国ベースの非営利シンクタンクEmberが、2030年までの各国の目標で再エネを3倍にできるかの分析を出している(注1)。2030年にRE3倍というのは、世界全体では、現状の約3,600GWから11,000GW規模への拡大となる。実際に、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)や国際エネルギー機関(IEA)も同じレベルの見通しを公表している。

IRENA WETO:2022年の3,372GWから2030年には11,174 GW

IEA NZE:2022年の3,629GWから2030年には11,008 GW

これは、年間では、2022年の300GW/年増から2030年には1,500GW/年増・毎年16%増が必要となるが、Emberは「可能」としている。
 

Ember Insight(2023/11/17)より

2030年に11,000GWに達するには、年間追加量は2023年の500GWから2030年には1,500GW強に増やす必要がある。心強いことに、これは2016年から2023年にかけて世界が平均して達成したのと同じ成長率である。つまり、年間追加は歴史的な速度で上昇し続ければ、11,000GWに達することが可能である。

太陽光については、BloombergNEFが11/29に予測を出しており、今年2023年は、何と413GW(昨年の260GWから60%増)の見込みとしている(注2)。そのBloombergNEFの予測図(下記)では、太陽光が2030年に約750GW/年なので、上記の1500GW/年増のほぼ半分で、その残りを風力などで埋めるのはさすがに厳しいかもしれない。



[注1] "Tracking national ambition towards a global tripling of renewables” 21 November 2023
https://ember-climate.org/insights/research/tracking-national-ambition-towards-a-global-tripling-of-renewables/#supporting-material
[注2] Global PV Market Outlook, 4Q 2023, BloombergNEF (BNEF), 29 November 2023
https://about.bnef.com/blog/global-pv-market-outlook-4q-2023/?utm_source=social-o&utm_medium=Twitter_BNEF&utm_term=11957311876&utm_campaign=732078&tactic=732078&linkId=251997039

他方、今年4月サイエンス誌の論文では、指数関数的な要素を織り込んで太陽光の成長を予測しており、2030年にざっと1TW/年という追加を見込んでいる(注3)。こちらの方が、より3倍増の目標に近づく可能性がある。

さて日本だが、冒頭のEmberレポートに戻ると、以下のように評価されており(本文34ページから)、きわめて評価が低い。日本は、太陽光発電と風力発電で、さらに大胆な目標を掲げて、これを実践する必要がある。



[注3] Nancy M. Haegel, et.al., “Photovoltaics at multi-terawatt scale: Waiting is not an option”, SCIENCE, 6 Apr 2023, Vol 380, Issue 6640, pp. 39-42, DOI: 10.1126/science.adf6957

 

Ember Insight (本文34ページ)より

<日本>
日本は2030年までに、総発電量の38%を賄う201GWの再生可能エネルギー容量の達成を目指している。日本は、米国やEUと比較して、自然エネルギー比率の上昇を半分しか計画していない。
IEAのネット・ゼロ・シナリオによれば、もっと高くなるはずである。日本は現在、既存の目標を達成するために必要なスピードよりも速いペースで発電所を建設しており、これは目標が引き上げられる可能性を示唆している。原子力発電の再稼働の遅れは現実的なリスクであり、自然エネルギー目標を引き上げることで軽減できる可能性がある。

<現在の目標>
資源エネルギー庁が2021年に発表した第6次エネルギー基本計画には、2030年までに自然エネルギーによる発電の割合を36~38%にするという目標が盛り込まれている。その補足文書では、日本は2030年に向けて、太陽光発電118GW、風力発電24GW、水力、バイオエネルギー、その他の自然エネルギー60GWを含む201GWの容量開発計画を示している。
日本の目標は、再生可能エネルギー容量を2022年の120GWから2030年までに201GWへと、わずか1.7倍増加させることである。自然エネルギーの市場シェアは、2022年から2030年にかけて14-16%ポイント(22%から36-38%)増加するだけで、EUの30%ポイント増加、米国の37%ポイント増加の約半分である。

<より高い野心の可能性>
日本の2030年における太陽電池と風力のシェア目標は現在21%であり、IEAのネット・シェア目標を達成す るために必要な水準には達していない。IEAのネット・ゼロ・シナリオを達成するために必要な水準には達していない。このシナリオでは、日本は2030年に総発電量に占める太陽光と風力の割合を30%にする必要があるとしている。しかし、日本の自然エネルギー目標は、日本が達成している自然エネルギーの急速な伸びを反映していない。
IEAは、日本が2023年に最大1,200万kWの再生可能エネルギー容量を追加できると見積もっている。これは、直線的な成長を仮定した場合、国家目標を達成するために2023年から2030年までに必要な年間1,000万kWよりも高い。さらに、142GWの太陽光・風力発電プロジェクト(屋上ソーラーを除く)が計画中であり、これだけでも目標を達成するのに十分である。2030年の発電能力目標には24GWの風力発電しか含まれておらず、これは日本が他のG7諸国と肩を並べるために活用できる未開発の潜在的可能性の分野である。
日本のクリーン電力の目標は、原子力発電の増加から計画されている。2022年の5%から2030年には22%に増加する予定である、 再生可能エネルギーは2022年の22%から2030年には36-38%に増加する予定である。しかし、原子炉の 再稼働は遅れており、2021年に1基、2022年に1基、2023年に2基が再稼働した、 2024年には2基が計画されている。この遅れは日本の気候目標にリスクをもたらす。このリスクは、より高い再生可能エネルギー目標によって軽減することができる。

 

 


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