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RE100と「環境価値」の混乱を超えて(その3)

2020.10.08

「再エネ価値」とは何か

 

日本のいささか「分裂症気味」の環境価値(下図)について、前回は「最初の2つのボタンの掛け違い」のうち「ゼロ・エミッション」という括りを議論した。今回は、もう一つのFITにおける賦課金と環境価値の扱いの「過ち」について議論する。

 

(出典)資源エネルギー庁 第38回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会資料「非化石価値取引市場について」(2020年1月31日)に筆者が合成

https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/seido_kento/pdf/038_04_00.pdf

 

国は、FIT賦課金のすべてを環境価値とし(「過ち」その1)、その価値は負担している国民に帰属するため再エネ発電事業者には帰属しないと定義した(「過ち」その2)。この2重の「過ち」が、FIT電源をめぐって「再エネと表示できない」など、訳のわからない、今日に至る大混乱の出発点だ。たとえば図1にあるとおり、国は、環境価値をさらに「腑分け」して、ますます訳のわからない「スパゲッティ状態」に陥っている。

 

図1 国による再エネ電源の価値分類

 

FIT賦課金のすべてを環境価値とすることが、なぜ「過ち」か。図2に示すとおり、FIT賦課金は、段階的に下がってゆき、最後は消えることが想定されている制度だ。そのFIT賦課金をすべて環境価値に位置づけると、環境価値も時間とともに下ることになる。

 

図2  FIT賦課金をすべて環境価値に位置づけた国の整理

 

これは明らかにおかしい。ではどうするか。

 

図3のとおり、FIT賦課金を大きく2つに分けて考えればよい。時間とともに下がる部分と下がらない部分に分け、前者は仮に「再エネ普及支援金」と呼び、後者こそが「環境価値」となる。価格イメージで言えば、初期の太陽光40円/kW時で言えば、回避可能原価を仮に10円/kW時とすれば、残る30円/kW時のうち、たとえば「環境価値」は1円/kW時、「再エネ普及支援金」が29円/kW時となる。今年のFIT13円/kW時なら、「環境価値」は同じ1円/kW時として、「再エネ普及支援金」が2円/kW時に下がったと考えればわかりやすい。

 

図3  FIT賦課金と環境価値を切り分ける整理

 

次に、「過ち」その2である「環境価値」が誰に帰属するか、という問いだ。前段の切り分けをすれば、話はぐっと分かりやすくなる。回避可能原価は電力会社が負担し、「再エネ普及支援金」は国民が負担するものの、そこには環境価値は含まれていない。環境価値は、その費用を負担した人に帰属する。したがって、最初は再エネ発電事業者に帰属する。その上で、引き取り先が未定の環境価値は、デフォルトで電力会社(旧一般電気事業者)がたとえば1円/kW時で引き取ると決めれば、これが最低価格となる。再エネ発電事業者は、1円/kW時より高く買ってくれる小売電気事業者やRE100企業などが見つかれば、その価格で売れば良い。

 

以上のように整理すれば、FITからFIPに移行しようとも、明快に整理できる。

 

ただし、今後、すでに海外で実現しているように、再エネ(特に太陽光発電)が化石燃料よりも安くなってきた場合、事情が変わってくる。再エネ価値が「負担」ではなく「お得」になるからだ。また容量市場のように、「kW時」ではなく「kW」の負担という、新しい市場も立ち上がっている。再エネや電力を巡って、ますます複雑かつ多岐にわたる制度や市場が変化してきており、制度設計でも対応する企業の側でも、本質と王道を見失わないことが肝要だろう。

 


 

飯田哲也(いいだてつなり)エネルギー・チェンジメーカー 

国内外で有数の自然エネルギー政策のパイオニアかつ社会イノベーター。
京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻修了。
東京大学先端科学技術研究センター博士課程単位取得満期退学。
ルンド大学(スウェーデン)客員研究員、21世紀のための自然エネルギー政策
ネットワーク(REN21)理事世界風力エネルギー協会アドバイザーなど国内外で
自然エネルギーに関わる営利・非営利の様々な機関・ネットワークの要職を務めつつ
国や地方自治体の審議会委員等を歴任。
「北欧のエネルギーデモクラシー」「自然エネルギー政策イノべーション」など著書多数。
1959年山口県生。


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