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RE100と「環境価値」の混乱を超えて(その2)

2020.09.04

さて、日本のいささか「分裂症気味」の環境価値(下図)について、前回、「最初のボタンの掛け違い」に立ち返って、イチから見直すほかない。その第1は、エネルギー供給高度化法で定めた「ゼロ・エミッション」という括りだと述べた。言うまでもなく、再エネと原発をひと括りにして「ゼロ・エミッション」と呼んだことの政策の間違いだ。再エネこそがこれから拡大すべき政策対象であって、政治的にも意見も立場も分かれる原発をひと括りにするべきではない。

(出典)資源エネルギー庁 第38回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会 制度検討作業部会資料
「非化石価値取引市場について」(2020年1月31日)に筆者が合成

https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/seido_kento/pdf/038_04_00.pdf

 

エネルギー供給高度化法では、2030年までにゼロ・エミッション電源を44%と定め、これを達成することを定めている。これを達成する手段として「非化石証書」を充てようとしているから、ミソとクソを混ぜたような混乱になっている。その混乱した「非化石証書」を、エネルギー供給高度化法を根拠とする「官製市場」で取引しようというのだから、混乱✕混乱となることは、必定だ。

「実質ゼロエミ」さがこの制度の混乱とのいかがわしさの最大の象徴だろう。なにせ、石炭火力発電に原発由来の非化石証書(「非FIT証書」と呼ばれる)を重ねることによって、「実質ゼロエミ」と呼ばれる電気に化けるのだ。逆に「化けの皮」を剥がすと、原発を再稼働すればするほど、石炭火力を維持できるということだ。これはもう、法制度として破綻していると言わざるを得ない。

制度論的にさらに2つの大きな問題がある。一つは「価値の二重払い」だ。より専門的には「追加性」と呼ばれる。非FITの水力発電や原発は、もともと旧一般電気事業者のときに、総括原価方式に基づいて原価を回収しつつ、すでに完成している。そこから有価物の非化石証書を発行しても、何らゼロ・エミッション電源を増やすことには貢献しない。その場合「追加性がない」と判定され、「価値の2重払い」を避けるために非化石証書としての価値は認められないはずである。

もう一つは、非化石証書のうち次回議論するFIT証書を除く、非FIT証書は「再エネ限定」(=水力発電)と「再エネ指定なし」(=原発電気)の2種類となる。その原発のすべて、水力発電のほとんどは、旧一般電気事業者が所有している。つまり非FITの非化石証書は、旧一般電気事業者が独占的な供給者となる。2019年度で見れば、電力の比率で合計25%の非化石電源のうち、FITは約9%、非FIT・非化石が16%と3分の2を占める。このため、本来期待される「再生可能エネルギーの新規電源」が拡大する制度にはなっていない。

 やはり、この「混乱」を解消するには、最初に戻って、エネルギー供給高度化法の廃案以外にはない。


 

飯田哲也(いいだてつなり)エネルギー・チェンジメーカー 

国内外で有数の自然エネルギー政策のパイオニアかつ社会イノベーター。
京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻修了。
東京大学先端科学技術研究センター博士課程単位取得満期退学。
ルンド大学(スウェーデン)客員研究員、21世紀のための自然エネルギー政策
ネットワーク(REN21)理事世界風力エネルギー協会アドバイザーなど国内外で
自然エネルギーに関わる営利・非営利の様々な機関・ネットワークの要職を務めつつ
国や地方自治体の審議会委員等を歴任。
「北欧のエネルギーデモクラシー」「自然エネルギー政策イノべーション」など著書多数。
1959年山口県生。


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