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飯田哲也「RE100への途」

最悪すぎる日本の再エネ出力抑制を改善するために

2023.06.30

今年(2023年)に入ってからの太陽光や風力への出力抑制が激しさを増している。2018年から出力抑制を開始した九州電力や昨年から出力抑制を始めたばかりの中国電力では、60%を越える出力抑制が何度も行われている。
そのため、再エネ出力抑制の「異様な増加」に対する苦境の声が相次いでいる。他の電力会社も足並みを揃えて出力抑制の激しさを増しているだけでなく、今年は、中部・関西も実施したほか、東京電力でも抑制の指示が行われた(回避されたものの)。

低需要期かつ太陽光の出力が増える春期は、出力抑制が増す傾向があることは確かだが、年間で見ても、九州電力と中国電力は▲10%を越える出力抑制が予想される。いずれも自然変動再エネ(VRE)の比率が20%に満たない段階で、ここまで激しい出力抑制は、諸外国と比較しても、例を見ない(図)。これでは、この後の新規の再エネ開発は進むはずもなく、再エネ主力電源化や2030年目標などおよそ実現できないだけでなく、個別事業者の倒産・破綻の恐れさえ懸念される。

 

 

各国の再エネ出力抑制とVER比率の比較

 

 

短期的な緊急措置としては、火力最低出力を深掘りすべきだろう。現状は、一律50%賭している火力最低出力を、さらに下げてゆくことで、九州電力以外の出力抑制は回避できる。具体的には、電源IIIは春期には予防的に停止する、最低出力を落とせる天然ガスに州通的にシフトさせるなどだ。

この火力最低出力化を広域で対応することも必要だろう。中央3社(東京・中部・関西)は、まだまだ余裕があるため、その中央3社の火力最低出力化を促して広域対応を進める仕組みが必要だ。その際に、地域間連系線活用の最大化すること、特に充分に活用されていない関門連系線を最大限活用する運用の見直しは必須だろう。

未だに深夜電力メニューが適用されている給湯器(エコキュートと電気温水器)の深夜需要を昼間へシフトするインセンティブが必要ではないか。九州電力で300万kW規模、中国電力でも200万kW規模、四国電力も100万kW規模の最大需要が推計されるため、これを昼間にシフトさせることで、太陽光ピークを吸収できる。

出力抑制に対する経済的補償もあらためて検討が必要だろう。現状のように電力会社が抑制し放題という現実を改善するためにも、正当な対価を支払う必要がある。実際に、VREの調整力としての活用しているのだから、当然の措置だろう。

原子力発電に対しても、柔軟性向上に参加させるべきだろう。本来、太陽光と風力は限界費用(マージナルコスト)がほぼゼロの最も安い電源であり、純国産エネルギーであり、温室効果ガスも放射性廃棄物も出さない、最優先すべき電源である。それよりも優先度が劣る原子力発電は、せめて春期に定期点検時期の調整することや50%など低出力運転化などを検討すべきだろう。

以上の短期的な措置も、これからの再エネ(太陽光と風力発電)の急増に対しては、焼け石に水である。したがって、中長期的に、柔軟性の飛躍的に向上するほかない。基本的には、系統蓄電池等の急速・大規模導入にする以外の手はない。規模としては、2030年までに40GW・160GWh規模が必要だ。幸いにして、世界は蓄電池の爆発的な拡大期に入っており、この程度の蓄電池重要な充分に生産可能である。

もう一つは、マイナス価格導入を含む電力市場の抜本的改革である。本来、限界費用(マージナルコスト)がほぼゼロの最も安い太陽光と風力が優先される、公正でオープンな電力市場への見直しが待ったなしである。

 

 


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