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RE100ブログ

<続>RE100と新型コロナウィルス

2020.04.26

未だに今後の展望の見えない新型コロナウィルスのパンデミックだが、引き続きRE100との関連を考察する。というのも、今、世界レベルで経験している新型コロナウィルス危機が、いつか何らかのかたちで終息した後(コロナ後)の社会は、残念ながら私たちの暮らしも国内外の経済も、大きく毀損しているに違いない。すでに、一世紀前の大恐慌を上回る影響との観測も出ている。そこからの再構築を考える上で、RE100もしくは再生可能エネルギーは欠かせない要素だからだ。

米国では、経済学者や環境学者など有志が今年3月23日に連邦議会宛の公開書簡「コロナ後の経済再建のための緑の刺激策」を公表し、パンデミック大恐慌からの経済再建・差し迫る気候危機・極端な経済格差への緊急対応を提言している[1]。これは、実質的に、近年、米国や欧州で求められてきた経済・雇用と気候危機、社会的格差への同時解決を目指す「グリーン・ニューディール」である。

米国では、2018年11月に民主党のアレクサンドリア・オカシオ=コルテス連邦下院議員とエド・マーキー連邦上院議員が「グリーン・ニューディール」を起草した。翌19年2月7日には「10年以内に炭素排出をゼロ、100%再生可能エネルギーに移行」することを目指す下院決議案[2]を発表した。現在進行中のアメリカ大統領選挙でも、グリーン・ニューディール政策は焦点の一つとなっている。欧州でも、19 年 12 月に発足した欧州連合(EU)の新体制(フォンデアライエン委員長)のもとで、50年までに炭素中立を目指す「欧州グリーンディール」を優先課題の筆頭に位置付けている[3]
グリーン・ニューディールの起源は、2008年7月20日に当時進行中だった金融危機(リーマンショック)と原油価格高騰と同時に気候変動にも対処する提案として、英国のグループが発表した報告だ[4]。フランクリン・ルーズベルト米大統領がウォール街大暴落後の世界恐慌を克服するために行ったニューディールに由来していることは、言うまでもない。

直後に、国連環境計画(UNEP)が「グローバル・グリーン・ニューディール」として取り上げ、当選したばかりのバラク・オバマ米大統領、中国、そして日本も後に続くなど、リーマンショックで痛手を受けた世界中で一種の「ブーム」となった。ところが、これらの第1次ブームは現実の効果が見えないまま、金融危機の安定化と原油価格の沈静化とともに、消えていった。「早すぎたブーム」だったからだ。
その状況はこの10年で大転換した。再生可能エネルギーが主役となり、RE100が現実の目標となり、電気自動車や自動運転が現実のものとして普及を始めた。それらが、再びグリーン・ニューディールへの期待が盛り上がった背景である。

新型コロナウイルス危機は、世界中でほぼ同時に直面しているため、日本の政治行政システムの機能不全とも言える対応の拙さが際立つ。数日で感染者が倍増する強力な感染力であるため、わずか数日・数週間で爆発的に感染が広がってゆく。この急速な感染拡大に対して、検査や医療体制、国民への直接的な経済補償など矢継ぎ早に対応している韓国、台湾、ドイツなど諸外国に比べて、日本の対応は明らかに後手後手に回っている。時間スケールは異なるものの、ここ10年の太陽光発電など再生可能エネルギーの急激な普及と役割の変化に対応できていない日本の政治・行政・社会とも通底している。

新型コロナウイルスに関して時々刻々増大してゆく最新の知識や技術を使いこなせない政治行政や既存組織の硬直性とともに、人々の暮らしはおろか生命と健康さえ守ろうとしない今の政治態度を、私たちは心に深く刻む必要がある。直面する危機にさえまともに対処できない政治行政には、気候変動という長期的な危機にも、すでに起きてしまった原発事故という危機や後処理にも、対処できようがないからだ。グリーン・ニューディールとは、社会インフラの抜本的なアップデートとともに、それらの所有や統治、ガバナンスのあり方の見直しも要請している。

 

[1] ”A Green Stimulus to Rebuild Our Economy – An Open Letter and Call to Action to Members of Congress”(2020年3月23日) https://medium.com/@green_stimulus_now/a-green-stimulus-to-rebuild-our-economy-1e7030a1d9ee

[2]  Ocasio-Cortez, Alexandria (February 12, 2019). "H.Res.109 – 116th Congress (2019–2020): Recognizing the duty of the Federal Government to create a Green New Deal" https://ocasio-cortez.house.gov/sites/ocasio-cortez.house.gov/files/Resolution%20on%20a%20Green%20New%20Deal.pdf

[3] European Commission “The European Green Deal” COM(2019) 640 (2019年12月11日) https://ec.europa.eu/info/sites/info/files/european-green-deal-communication_en.pdf

[4] New Economic Foundation “A GREEN NEW DEAL” (2008年7月20日) https://neweconomics.org/2008/07/green-new-deal

 


 

飯田哲也(いいだてつなり)エネルギー・チェンジメーカー 

国内外で有数の自然エネルギー政策のパイオニアかつ社会イノベーター。
京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻修了。
東京大学先端科学技術研究センター博士課程単位取得満期退学。
ルンド大学(スウェーデン)客員研究員、21世紀のための自然エネルギー政策
ネットワーク(REN21)理事世界風力エネルギー協会アドバイザーなど国内外で
自然エネルギーに関わる営利・非営利の様々な機関・ネットワークの要職を務めつつ
国や地方自治体の審議会委員等を歴任。
「北欧のエネルギーデモクラシー」「自然エネルギー政策イノべーション」など著書多数。
1959年山口県生。

 

 

 

 

 

 


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