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飯田哲也「RE100への途」

RE100を目指す環境省脱炭素先行地域(その3) 現実に直面する「壁」

2022.09.30

今回は、現実に環境省・脱炭素先行地域に取り組んでいる大潟村を具体例に、理想から計画、そして現実に落としていくと、さまざまな「壁」にぶつかる。以下、主要な課題を列挙する。

 

 ①太陽光発電と蓄電池のオフサイトPPA

 地域の電力を再エネ化する上で、太陽光発電と蓄電池を組み合わせた取り組みが中心となる。この場合、自家消費として使える「オンサイト」は大きな問題はないが、「オフサイト」は課題が多く、制度設計と市場の現実との間で隘路に入っている。

環境省ではオフサイトのうち、小売電力とセットで環境価値を届けるフィジカルを想定しているが、卸電力取引所の高騰問題のため協力可能な新電力が見当たらず、唯一の可能性は旧一般電気事業者による協力しかなく、その裁量に委ねられている。

 仮に環境価値のみを届けるヴァーチャルが認められたとしても、そもそも日本ではまだ実例がなく、しかも・の利用が認められていない脱炭素先行地域でのヴァーチャルは、さらにハードルが高いため、これも実現の課題が大きい。

 ②「マイナス1m問題」

大潟村で導入を想定している地域熱供給で住宅の入り口まで温水を持ってきても、そこから内側で温水を給湯や暖房として利用できる住宅が、北海道の一部を除いて、日本ではほとんど存在しない。通信や配送での「ラスト1マイル」に倣えば、「マイナスm問題」と言える。

これは日本の地域熱供給の重大な障壁である。住宅の中にお湯を用いた暖房・給湯のインフラが普及しておらず、その製品群(温水熱交換器や温熱パネルヒーターなど)もほとんど見当たらない。大潟村で村営住宅の新築を請け負っている全国的な大手ハウスメーカーも、過去に設計した経験がないという。住まい手も灯油ストーブや電化システムには慣れているが、お湯を用いた暖房・給湯システムの経験は、温水式の床暖房を除いては、皆無に近いだろう。

住宅の内側の暖房・給湯インフラ整備まで、地域エネルギー会社がカバーすることは費用面でも現実面でも困難だが、その入れ替えをしないとそもそも普及しない。使ったことない温水システムの導入に住まい手が納得するハードルも高く、それらが全てコスト増に直結する。

 ③バイオマスボイラー技術の落差

かねてよりバイオマス業界では共通認識だったが、あらためてバイオマスボイラー技術の国内外の差は大きい。多様な農業残渣の燃焼技術を筆頭に、クリンカボイラー内の固着灰分の低減技術、幅広い湿分の燃料、日本では未だ事例のない潜熱回収技術(今回の大潟村は乾燥籾殻のため導入不要)など基本原理からの技術構築に大きな差を見ることが出来る。

 ④建設運転コストの壁

 今回は脱炭素先行地域による交付金事業で手厚い補助金によって何とか収支を整えることができそうだが、デンマークなど北欧の地域熱供給は基本的に補助金なしで成立している。日本と対比すると、大きく以下のつの要素がある。

  • 輸入に伴う内外価格差(輸入コスト、円安要素)(ハードコスト)
  • 取引費用と規制費用の差(ソフトコスト)
  • 環境税の差

現時点で①はやむを得ないとはいえ、将来は同水準のボイラーの国産化を期待したい。②は多重下請構図の建設や商取引で中間業者が多重に入ることによる費用と、規制に伴う時間と手間に伴う費用を指す。補助金獲得に伴う膨大な手続きも規制費用に含まれる。ソフトコストは内外価格差の中で占める要素がハードコストよりも大きく、「〜割」ではなく「〜倍」の桁で異なる。③は政策制度の問題であり、現時点では実現の見通しは見えない。

 

これらの課題はどれも容易なものではないが、一つひとつ改善しながら解決してゆき、その経験や教訓を日本に拡げて定着させることも脱炭素先行地域の狙いとされている。

 


 

飯田哲也(いいだてつなり)エネルギー・チェンジメーカー 
国内外で有数の自然エネルギー政策のパイオニアかつ社会イノベーター。
京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻修了。
東京大学先端科学技術研究センター博士課程単位取得満期退学。
ルンド大学(スウェーデン)客員研究員、21世紀のための自然エネルギー政策
ネットワーク(REN21)理事世界風力エネルギー協会アドバイザーなど国内外で
自然エネルギーに関わる営利・非営利の様々な機関・ネットワークの要職を務めつつ
国や地方自治体の審議会委員等を歴任。
「北欧のエネルギーデモクラシー」「自然エネルギー政策イノべーション」など著書多数。
1959年山口県生まれ

 


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