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日本を襲う電力危機はRE100の逆風か、追い風か

2022.06.30

ここに来て、日本全体が「電力危機」で騒々しくなっている。21世紀も20年を過ぎて、いわば「途上国型」の電力危機に直面しているのも奇妙な話だが、これに対して、やれ石炭を廃止しすぎた、再エネの不安定性が問題だ、原発再稼働を急げなど、本質を見ない、火事場泥棒的なドサクサ紛れの主張が目立つ。

コトの発端は、3月16日に福島沖地震で、首都圏2百万戸以上の停電に見舞われた。この停電は3時間で解消されたものの、同時に多くの火力発電が予定外の休止を余儀なくされた。そこに翌週22日に季節外れの寒波が首都圏を襲い、電力不足危機が一気に顕在化した。この時は、経産大臣が国民に節電を呼びかけるなどして、全面停電は免れたが、構造的な問題を何ら解決しないまま、今回の6月末の予想外の高温による、電力不足危機に再び直面しているのだ。

電源が足りないのは確かだろう。だからといって、慌てて火力発電を復活させたり、ましてや安全審査や地域同意をすっ飛ばして原発再稼働をするのは、愚の骨頂である。今の日本が直面している「電力不足危機」の本質に切り込まなければ、同じ危機と泥縄を繰り返すだけだ。

「電力不足危機」の本質は何か。これまでに進められてきた「電力システム改革」の失敗が露呈したことだ。だからといって、元の「地域独占・垂直統合」に戻すことはありえない。「自由化」と呼んでいたものが、「本当の自由化」ではなく、市場も機能しなかったのだから、そこにメスを入れる必要があるのだ。

たとえて言えば、現状は「顔(口先)は自由化市場」、「胴体は旧一電による事実上の独占」という、キメラのような状態になっているのだ。「顔(口先)は自由化市場」は、説明するまでもないだろう。見せかけだけ「自由化市場」ということだ。

「胴体は旧一電による事実上の独占」とは、現状も発電も販売も8割が未だに旧一電が支配しており、卸電力取引所へも4割の電源を拠出しているが、その7割を旧一電が買い戻しているため、卸電力取引所は全販売電力のわずか1割という、透明性も流動性も低い市場になっていることだ。これが、現状、卸電力取引所が高騰し、地域新電力が倒産や退場を余儀なくされている、本質的な問題である。

これに対して、すべての電源が卸電力取引所にメリットオーダー(価格の低い順)に登録され、さらに系統から排除されている自家発電やガスコジェネもエントリーできるようにすれば、限界価格も全体のメリットオーダーに沿って下がる上に、電力需要が急増したときに利用できる電源も何割も増える。

今回の電力危機に際して、各電力会社(旧一電)から「予備率★%」という数字が公表されたが、これこそ「地域独占・垂直統合時代の計画経済的な手法」に他ならない。上記の市場システムにすれば、通常の需要変動に対しては市場価格変動だけで充分に対応できるようになる。

また、本来はこうした電力危機に備えて一定の予備の電源を確保することは、もちろん必要だ。これを「アデカシー」と呼ぶ。2020年に電力広域的運営推進機関(OCCTO)が鳴り物入りで導入した「容量市場」は、本来、こうした電力危機のためのアデカシーを確保する目的の仕組みだったはずだが、日本では単なる「石炭火力発電への補助金」へと堕ちてしまった。これも旧一電による「規制の虜」の仕業である。ドイツなどは、日本よりもはるかに費用効率的(20分の1)で、即座に利用でき、しかも普段は石炭火力を停止させておくため二酸化炭素抑制にも貢献する「戦略的予備力」という、はるかに賢明な制度を導入している。さらにフランスの要領メカニズムでは、アデカシー確保の手段として、デマンド・リスポンス(DR)と蓄電池だけを対象としており、これも新技術普及の手段を兼ねた賢い方策といえる。いずれも、日本の政策担当者は謙虚に学んで欲しいものだ。

「胴体は旧一電による事実上の独占」には、もう一つ、送電部門が未だに旧一電の経営と事実上、一体化している問題がある。これが欧米に見られる中立なTSO(送電システムオペレーター)とは似て非なるかたちで、旧一電に従属する、歪んだ体制となっている。しかも、見かけ上は「発送電分離」、小売自由化をしたために、安定供給に誰も責任を取らない体制となってしまった。これも、制度移行マネジメントにおける深刻な失敗である。関連して、かつての地域独占・垂直統合の時代には、東京電力だけで需要の1割・約五百万kWもあった「需給調整契約」が、やはりこの10年で消えてしまった。これも、制度移行マネジメントにおける失敗である。

以上見てきたとおり、今、日本で直面している電力危機は、途上国型であると同時に、新しいシステムの設計の失敗とその移行の失敗という「トリプル・ミス」である。電力危機は、現状の電力市場の歪みが生んだもので、これは引き続き大きなリスクである。しかし、電力危機は、本来、再生可能エネルギーへの大きな追い風となるはずであり、しかも脱炭素時代における要請はますます大きくなっている。RE100に向けた再エネへの挑戦も、上記の様なリスクを見据えつつ、ここ危機を機会に変えたものが、未来を拓くのではないか。

 



飯田哲也(いいだてつなり)エネルギー・チェンジメーカー 
国内外で有数の自然エネルギー政策のパイオニアかつ社会イノベーター。
京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻修了。
東京大学先端科学技術研究センター博士課程単位取得満期退学。
ルンド大学(スウェーデン)客員研究員、21世紀のための自然エネルギー政策
ネットワーク(REN21)理事世界風力エネルギー協会アドバイザーなど国内外で
自然エネルギーに関わる営利・非営利の様々な機関・ネットワークの要職を務めつつ
国や地方自治体の審議会委員等を歴任。
「北欧のエネルギーデモクラシー」「自然エネルギー政策イノべーション」など著書多数。
1959年山口県生まれ

 


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