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飯田哲也「RE100への途」

RE100と新型コロナウィルス

2020.03.30

今回は、時節柄、新型コロナウィルス問題とRE100との関連を考察してみる。直接的には世界全体のRE100への道のりへの一時的な遅れは避けられない。世界の太陽光発電パネル生産の8割、設置の3割強、風力発電の生産と設置の5割を占める中国でサプライ・チェインに大きな打撃を受けたからだ。

 

中国の太陽光発電パネルの6割を生産する江蘇省は、新型コロナウィルスで最も大きな打撃を受けた。ここには、カナディアン・ソーラー、LONGi、Trina Solar、Q-CELLS、JAソーラーの主力工場がある。同じく大きく影響を受けた浙江省には、ジンコソーラーとJAソーラーの主力工場がいくつかある。また太陽光発電パネルの完成品だけでなく、シリコン素材やガラス、アルミフレームも中国製が主力であり、パネル以外にもパワーコンディショナーや架台なども中国製品が主力であるため、グローバル・サプライチェインにも大きな影響を与えている。さらに、これが計画通りの生産量に到達できない場合、需給関係や納期の関係から、主要部材の価格上昇や納期遅れといった影響が懸念されている。つまり、今年、世界全体の太陽光発電は前年比15〜20%増、風力発電も前年比増の需要拡大が見込まれていたが、これらが少なくとも今年はスローダウンすることは避けられない見込みだ。

 

同時に、経済全体の冷え込みや移動の縮小によって、電力需要や石油需要の大幅な縮小と原油価格の下落も続いている。IEAによれば欧州で新型コロナウィルスを封じ込めた多くの国や地域の電力需要は15%下落、イタリアでは20%下落したと報告している。こうした電力需要の大幅な縮小は卸電力価格の下落に繋がり、太陽光発電や風力発電の新規投資を遅らせ普及のスピードを鈍らせる恐れがある。とはいえ、長期的な趨勢が変わることはない。風力発電、太陽光発電、電気自動車と蓄電池の価格は、需給変動で多少の揺り戻しがあったとしても、市場拡大の趨勢と技術学習効果によって継続的に下がってゆき、RE100への足取りを取り戻すことは間違いない。

 

別の観点から、今回の新型コロナウィルスのパンデミックから学べることがある。倍々ゲームでの感染者の急増(いわゆる指数関数的な拡大)と太陽光発電や風力発電、電気自動車の拡大のペースが重なることだ。新型コロナウィルスは「数日で倍増」、太陽光発電などは「数年で倍増」と時間のスケールは違うが、起きている現象は、よく似ている。
新型コロナウィルスの場合は、最初は新型インフルエンザか風邪の一種と誰もが軽く見ていたが、やがて中国・武漢の状況を見て、その深刻さを理解し始めたが、それでもなお他人事で「対岸の火事」だった。やがて、それが自分の国や地域に飛び火して、自分ごととなり、買い占めや自宅での封じ込めなど、日常が一気に転換した。政治家や行政、専門家の認識の転換や対応の遅れもあった。世界的にはまだ感染爆発の序章に過ぎないが、人々の認識も生活も行動もビジネスも経済も、「コロナ前」から「コロナ後」へと大きく変わる途上にある。

 

太陽光発電や風力発電、電気自動車が引き起こしているエネルギー大転換は、この「日レベル」の大転換が「年レベル」で起きているだけで、しかも望ましい変化だ。同じように、政治家や行政、専門家の認識の転換や対応の遅れもあるが、それを見据えて今から「RE100後」を先取りすることこそ、今回の新型コロナウィルス危機から学ぶべきことではないだろうか。

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飯田哲也(いいだてつなり)エネルギー・チェンジメーカー 

国内外で有数の自然エネルギー政策のパイオニアかつ社会イノベーター。
京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻修了。
東京大学先端科学技術研究センター博士課程単位取得満期退学。
ルンド大学(スウェーデン)客員研究員、21世紀のための自然エネルギー政策
ネットワーク(REN21)理事世界風力エネルギー協会アドバイザーなど国内外で
自然エネルギーに関わる営利・非営利の様々な機関・ネットワークの要職を務めつつ
国や地方自治体の審議会委員等を歴任。
「北欧のエネルギーデモクラシー」「自然エネルギー政策イノべーション」など著書多数。
1959年山口県生。


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