2021.05.20
環境保護に関心を持っている場合、「グリーン電力証書」と呼ばれる制度を耳にしたことがある人も多いでしょう。グリーン電力証書は購入することにより、地球温暖化防止に貢献できる魅力があり、企業・自治体の環境対策として人気があります。
グリーン電力証書を活用するためには、利用する流れや他制度との違い、活用するメリットについても理解することが大切です。
そこで今回は、グリーン電力証書とは何かの説明から、J-クレジット制度や非化石証書との違い、グリーン電力証書を購入して活用するメリットまでを分かりやすく解説します。
グリーン電力証書とは、再生可能エネルギーから作られたグリーン電力が持つ環境価値を証書化し、取引できる形にしたもののことです。再生可能エネルギーには太陽光・風力・水力・地熱・バイオマスなどがあり、再生可能エネルギーで発電した発電事業者によってグリーン電力証書は発行されます。
グリーン電力証書の特徴は、発電された「電気そのもの」とは切り離して、「環境価値そのもの」である証書だけを購入できることです。グリーン電力証書を購入すると、購入後の電気使用量を「再生可能エネルギーで発電したグリーン電力である」と見なされます。消費者が電力を利用しやすい仕組みを保ちつつ、グリーン電力の普及・活用を促進することが、グリーン電力証書の目的です。
グリーンエネルギーCO2削減相当量認証制度とは、取引されたグリーン電力証書・熱証書が持つ環境価値を国が認証し、活用できるようにする制度のことです。活用の用途は、地球温暖化対策推進法に基づく下記の3つが定められています。
本制度でグリーン電力証書を活用する流れは、以下の通りです。
(1)グリーン電力証書・熱証書を購入する
証書発行事業者に連絡して、グリーン電力証書を購入します。購入の際に、本制度の利用を希望する旨を事業者側へ伝えてください。
(2)削減計画の認定申請を行う
証書発行事業者が、事務局(CO2削減相当量認証委員会)へ削減計画の認定申請を行います。
(3)口座開設申請を行う
配分されるグリーンエネルギーCO2削減相当量を登録するための口座開設を申請すると共に、下記の書類を事務局へ提出します。
(4)償却・取消申請を行う
下記の書類を事務局へ提出し、口座に登録されたグリーンエネルギーCO2削減相当量を、国の口座へ償却する申請を行います。
申請後に、償却・取消通知書を事務局から受領して、内容を確認してください。
(5)活用する
制度活用時は、償却・取消通知書に記載されたIDを、提出する報告様式の該当箇所に記載します。
グリーン電力証書と同様に環境価値を取引できる制度として、J-クレジット制度と非化石証書が挙げられます。グリーン電力証書とそれぞれの違いを、順番に見てみましょう。
●J-クレジット制度との違い
J-クレジット制度とは、企業がCO2排出を削減できる自主的な取り組みを実施した際に、削減されたCO2削減量を政府がクレジットとして認証する制度です。認証されたクレジットはクレジット購入者に売却して利益を出すことができます。
グリーン電力証書とJ-クレジット制度の違いは、転売できるかどうかです。J-クレジット制度のクレジットは電力・熱と完全に分離したCO2削減量であり、クレジット創出者や仲介事業者を通して売買できます。一方、グリーン電力証書は購入者が必ず使用する決まりとなっており、購入後の転売はできません。
●非化石証書との違い
非化石証書とは、再生可能エネルギーを含めた非化石電源によって発電された電力が持つ、非化石価値を証書化したもののことです。非化石価値とは石炭・石油などの化石燃料を使用していないことを示す、グリーン電力証書と近い性質を持っています。
グリーン電力証書と非化石証書の違いは、証書の直接購入者が異なる点です。非化石証書制度が作られた背景には、「2030年までに小売電気事業者が調達する電気の非化石比率を44%以上にする」と定めたエネルギー供給構造高度化法がありました。
そのため、非化石証書の購入対象は小売電気事業者のみとなっています。企業や自治体はグリーン電力証書を直接購入できる一方で、非化石証書を入手する場合は小売電気事業者を通さなければなりません。
グリーン電力証書を購入・活用することに、どのようなメリットがあるか、イメージが湧かない人も多いでしょう。企業や自治体にとってグリーン電力証書を購入する主なメリットは、下記の3つです。
ここでは、それぞれの活用メリットを、より詳しく解説します。
グリーン電力証書を購入すると、証書に記載されている電力量(kWh)相当分だけ、「グリーン電力を利用している」と見なされます。グリーン電力は発電時にCO2を排出しない付加価値があるため、グリーン電力証書を活用するとCO2排出量削減に貢献できます。
また、グリーン電力証書を発行する発電事業者は、発電設備認定のために追加性要件を満たさなければなりません。追加性要件の内容は、グリーン電力証書の販売による収入が、グリーン電力発電設備の維持・増設・新設に繋がると証明することです。
つまり、消費者がグリーン電力証書を購入すると、発電事業者は収入分をグリーン電力発電の設備投資に利用します。グリーン電力の発電を支えることで、将来的なCO2削減活動に貢献できる点もメリットです。
グリーン電力証書は国際イニシアティブへの報告に利用できます。グリーン電力証書を活用できる国際イニシアティブは、主に下記の3種類です。
●CDP
CDPとは、企業の環境情報を投資家へ開示・提供することを目的としたNGOです。質問書形式で企業の環境対策を調査し、評価・公表を行っています。
●SBT
SBTとは、パリ協定の目標達成を目指すために、企業が設定・保有する温室効果ガス削減目標のことです。参加企業は年に1回、進捗状況と温室効果ガス排出量を報告します。
●RE100
RE100とは、事業活動で使用する電力を、再生可能エネルギー由来の電力で100%賄うことを目標とするイニシアティブです。参加企業は年に1回、再生可能エネルギーの利用状況・発電量を報告します。
下記は、各国際イニシアティブのGHG(温室効果ガス)プロトコルについて、J-クレジット制度や非化石証書を報告に利用できるかを比較した表です。
グリーン電力証書 CDP
(GHGプロトコル準拠)○ SBT
(GHGプロトコル準拠)○ RE100
(GHGプロトコルベース・独自要件あり)○
J-クレジット制度(再エネ電力由来) CDP
(GHGプロトコル準拠)○ SBT
(GHGプロトコル準拠)○ RE100
(GHGプロトコルベース・独自要件あり)○
非化石証書 CDP
(GHGプロトコル準拠)○ SBT
(GHGプロトコル準拠)○ RE100
(GHGプロトコルベース・独自要件あり)△
(政府によるトラッキング証書のみ利用できる)
グリーン電力証書を購入すると、グリーン電力を利用していることを示す「グリーン・エネルギー・マーク」の使用許諾申請が行えます。グリーン・エネルギー・マークはグリーン電力を利用している自社の製品・サービスや、企業広告・イベントのPRに活用可能です。
製品・サービスにグリーン・エネルギー・マークを添付すると、商品購入者に対してグリーン電力の利用企業であるとアピールできます。環境意識が高い企業として認知されることにより、中長期的な企業イメージの向上に繋がることがメリットです。
グリーン電力証書とは、グリーン電力の環境価値を証書化したもののことです。環境価値を示す証書だけを購入できるため、太陽光発電所などの設備を持たない企業も、環境対策としてグリーン電力を活用できます。
グリーン電力証書はCO2排出量算定・報告・公表に活用でき、CDP・SBT・RE100といった国際イニシアティブの報告にも利用可能です。グリーン・エネルギー・マークの添付による企業イメージ向上にも繋がるため、中長期的な環境対策に関心を持つ企業はグリーン電力証書の購入をご検討ください。
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