2021.04.27
近年では日本国内においても地球温暖化対策への意識が高まっており、企業に対してもCO2削減やRE100基準の再エネ電力活用が求められています。企業の環境活動には太陽光発電による自家消費が多く活用されていますが、次なる手段として注目されている仕組みが、自己託送です。
今回は、自己託送の概要から、メリット・デメリット、託送料金の相場までを解説します。
自己託送について詳しく知りたい方や、環境活動の一環として自己託送の活用を考えている方は、ぜひ参考にして下さい。
自己託送とは、資源エネルギー庁が定める「自己託送に係る指針」によると、下記の通り定義されています。
自己託送とは、自家用発電設備を設置する者が、当該自家用発電設備を用いて発電した電気を一般電気事業者が維持し、及び運用する送配電ネットワークを介して、当該自家用発電設備を設置する者の別の場所にある工場等に送電する際に、当該一般電気事業者が提供する送電サービスのことである。
つまり自己託送は、企業が自家発電設備(太陽光発電設備)を導入して、自社の設備で発電した電気を送配電事業者が保有する送配電ネットワークを利用し、他地域の施設などに供給することを言います。
太陽光発電設備を設置した施設のみならず、複数の施設で再生可能エネルギー(再エネ)を利用できることが、自己託送の仕組みであり特徴です。
資源エネルギー庁の資料では自己託送を行うにあたり、下記の調達スキームが想定されると示されています。
・社内融通
サイト外の自社工場で発電した電力の自己託送と、小売事業者からの部分供給の併用
・グループ内融通
サイト外のグループ会社工場で発電した電力の自己託送と、小売事業者からの部分供給の併用
・グループ外融通
サイト外の他社工場で発電した電力の自己託送と、小売事業者からの部分供給の併用
自己託送制度は無制限に利用できるわけではなく、利用条件を満たしている必要があります。
自己託送制度を利用する条件は主に下記の通りとなります。
資源エネルギー庁の資料によると、自己託送を利用できる条件としては、電気事業法ならびに電気事業法施行規則による以下の条文で規定されています。
一般送配電事業自らが維持し、及び運用する送電用及び配電用の電気工作物によりその供給区域において託送供給及び電力量調整供給を行う事業(発電事業に該当する部分を除く。)をいい、当該送電用及び配電用の電気工作物により次に掲げる小売供給を行う事業(発電事業に該当する部分を除く。)を含むものとする。
第二条 法第二条第一項第五号ロの経済産業省令で定める密接な関係を有する者が維持し、及び運用する非電気事業用電気工作物は、次の各号のいずれかに該当するものとする
一 生産工程における関係、資本関係、人的関係等を有する者の需要
二 取引等(前号の生産工程における関係を除く。)により一の企業に準ずる関係を有し、かつ、その関係が長期にわたり継続することが見込まれる者の需要
三 共同して設立した組合(長期にわたり存続することが見込まれるものであって、当該組合の組合契約書において次に掲げる事項を定めている場合に限る。)の組合員である者の需要
自己託送はいずれも再エネ賦課金支払いの対象外となるため、無制限に容認すると自己託送を活用しない消費者(需要者)との公平性が担保できないことが問題となります。そのため、これまでグループ外融通は政府が容認する「密接な関係」と認められていませんでした。しかし、2021年11月18日に施行された制度改正により発電事業者と需要家が共同して設立した組合に関しては要件を満たした場合、実施可能となりました。
主な組合要件は下記の通りとなります。
これら関係性を満たしている場合、自己託送が可能となります。
企業活動におけるCO2排出量は非常に多く、温暖化対策を進めるためには国だけでなく企業の協力が欠かせません。
東京都では、2010年より年間エネルギー使用量1500kl(原油換算)以上の事業所を対象に、CO2排出量削減義務を課すキャップ&トレード制度を実施して成果を挙げています。今後企業の温暖化対策が義務付けられる動きは、ますます強まっていくでしょう。
自己託送は、企業の再エネ活用の推進やCO2排出削減に大いに役立てることが期待できます。ここでは、自己託送のメリット・デメリットについて解説しているため、ぜひ参考にして下さい。
自己託送は、太陽光発電の自家消費とは異なるメリットがあるため、今後の再エネ活用の手段として注目を集めています。
自己託送のメリットは、下記の通りです。
〇CO2排出量削減の最大化
自己託送に使用する電力は、CO2排出量が少ない太陽光発電による再エネ電力です。そのため、自家消費と自己託送を併用することで、企業活動全体におけるCO2排出量削減の最大化が期待できます。。
環境活動の一環として企業価値を高めることや、温対法対策としても適していると言えるでしょう。
〇エネルギーコストの削減効果
太陽光発電で企業活動に使用する電気を賄うことは、電力会社から購入する電気量が少なくなるため、電気代の削減に繋がります。さらに、自己託送を組み合わせることによって電気の自家消費量が増加するため従来の自家消費型太陽光発電よりも大きな電気代削減効果が期待できます。
また、同一地域内で自己託送を行う場合は、再エネの地産地消を行うことも可能です。
〇再エネ賦課金の低減
電力会社から購入する電気には、FIT制度を支えるための再エネ賦課金が電気料金に上乗せされています。再エネ賦課金は従量課金であるため、膨大な電力を使用する企業活動においては課金される金額も大きくなります。
太陽光発電による自家消費ならびに自己託送を行えば、電力会社から購入する電気量を減らすことができるため、電気代削減と同時に再エネ賦課金の課金額も減らすことが可能です。
自己託送はメリットが大きく注目されている仕組みですが、メリットだけでなくデメリットもあるため、両面を踏まえたうえで有効活用することが重要です。
自己託送のデメリットは、下記の通りです。
〇インバランス料金のペナルティが発生する場合がある
自己託送を行うためには、発電設備から電力供給先の需要地点へ送電するために、送配電事業者と契約して送配電ネットワークを利用する必要があります。その際、あらかじめ30分毎の送電量の計画値の提出が求められます。(計画値同時同量)
しかしながら、計画値の電力量と実際に送電した電力量(実績値)が一致しない場合、送配電事業者へペナルティとして差分に応じたインバランス料金の支払いが求められる場面があります。
そのため、計画値と実績値が大きく乖離しないように、正確な計画値の予測と電力の需給を一致させることが自己託送の運用では非常に重要となります。
〇非常用電源としてはあまり適していない
自己託送は、遠隔地の発電設備から送配電ネットワーク(系統)を利用して需要地点へと送電する仕組みです。そのため、自然災害などの要因により系統に不具合が発生した場合は、従来の電力会社から供給される電力と同じく停電してしまうケースが考えられます。
系統の影響を受けない通常の太陽光発電と比べると、非常用電源としては適していないと言えるでしょう。
最後は、自己託送を利用する場合の料金相場について、代表的な送配電業者3社会を例に挙げて紹介します。
託送料金の相場(高圧標準接続送電サービスの場合) | |
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東京電力パワーグリッド |
基本料金(実量契約):653円87銭/kW 電気量料金:2円37銭/kWh |
関西電力送配電 |
基本料金(実量契約):663円30銭/kW 電気量料金:2円86銭/kWh |
中部電力パワーグリッド |
基本料金(実量契約):467円50銭/kW 電気量料金:2円74銭/kWh |
※2023年4月実施接続送電サービス料金等単価表各社データ参照
※掲載金額には消費税相当額を含みます
自己託送を活用してRE100基準電力の電力供給を実現したい企業の方は、「RE100電力」が提供するサービスを検討することをおすすめします。。「RE100電力」では、設備導入から自己託送に関する送配電事業者との契約手続きサポートや、発電計画・需要計画の提出等の「アグリゲーション」に至るまで、高度な技術が求められる業務の代行サービスを提供しています。
自己託送の利用を検討している方は、ぜひ「RE100電力」へご相談下さい。
自己託送は、自家消費よりも広範囲に電気を供給できるうえ電気料金削減効果も大きいことから、再エネ活用の今後の主軸となることが期待されています。企業の環境活動においても大きなメリットがあります。
近年では2050年カーボンニュートラル実現へ向け、政府がGX(グリーントランスフォーメーション)に注力した政策を押し出すなど、企業に対する環境負荷削減への義務付けも強化されていくことが予想されます。
エネルギーコストやCO2排出量削減の課題を抱えている経営者の方は、ぜひこの機会に自己託送に関する情報や動向に目を向けてみて下さい。
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