2021.03.09
地球温暖化の原因となる二酸化炭素を削減し、地球環境を保護するために、脱炭素・カーボンニュートラルに向けた動きが活発になっています。例えば日本では、天然ガスの供給確保・カーボンリサイクルの推進などに、力が注がれています。
この記事では、脱炭素社会・カーボンニュートラルの解説から、日本・世界各国の脱炭素社会に向けた行動までを解説します。脱炭素社会に向けた動きを把握し、企業経営に活かしたい方は、ぜひ参考にしてください。
脱炭素社会とは、「二酸化炭素をはじめとした温室効果ガスの排出を実質的にゼロとする社会」のことです。温室効果ガスは、火力発電・産業活動・日常生活など、さまざまな場面で発生し、地球温暖化の要因とされています。
また、脱炭素社会と似た言葉に「カーボンニュートラル」があります。
カーボンニュートラルとは、「地球上にある炭素(カーボン)の均衡(ニュートラル)を保てる社会を実現すること」です。二酸化炭素の排出と回収が差し引きゼロとなるような社会を目指す概念として知られています。
脱炭素社会とカーボンニュートラルは、どちらも地球温暖化の原因となる「二酸化炭素」に焦点を当てており、持続可能な社会形成が目的です。
カーボンニュートラルの具体策としては、「化石エネルギーに依存する電力エネルギーを、太陽エネルギーや水素エネルギーなどの再生可能エネルギーに転換する」ということが挙げられます。
日本でも、脱炭素社会の実現は大きな課題です。菅首相は最初の所信表明演説において「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」と述べ、脱炭素社会実現に向けた指針を示しています。
菅首相が「脱酸素社会の実現」を政策目標の一つとした理由には、地球環境への配慮とともに、経済的な側面があります。EUではすでに約5割の投資家が「ESG」、つまり「環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)」を考慮した投資をしており、安定した資金調達には環境への配慮が欠かせません。
地方自治体においても、2021年2月時点で、東京都・京都市・横浜市を始めとする262の自治体が「2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロ」を表明している状況です。
出典:環境省「地方公共団体における2050年二酸化炭素排出実質ゼロ表明の状況」
以下では、グリーン成長戦略など日本政府が実施する脱酸素社会への動きを紹介します。
「グリーン成長戦略」とは、「経済と環境の好循環」を生み出すサイクルを指します。
脱炭素社会を実現するためには、化石燃料に依存する従来の産業構造や事業スタイルを変革することが必要です。産業構造や事業スタイルの変化には、新たなビジネスチャンスが生まれます。
政府は「2050年カーボンニュートラル」を宣言したことを皮切りに、グリーン成長戦略を策定しました。グリーン成長戦略では、成長が期待される産業として14分野を想定し、目標を設定しています。
以下は、グリーン成長戦略で示される成長産業の目標例です。
ライフスタイル関連産業 | 太陽光電力の推進 (削減した二酸化炭素をクレジットとして認証し、販売できるような仕組みを導入するなど) |
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物流・人流・土木インフラ産業 | 次世代型路面電車(LRT)など、二酸化炭素の排出が少ない人流システムの導入 |
水素産業 | 水素発電タービンの市場拡大と電力会社へのカーボンフリー電源の調達義務化 |
このように、政府はカーボンニュートラルの目標達成に向け、新たな成長戦略を展開しています。
脱炭素社会の実現において、天然ガス(LNG)は重要視される資源です。日本政府は天然ガスの供給確保を推進しています。
天然ガスが重視される主な理由は下記の通りです。
天然ガスは、石炭の二酸化炭素排出量を100とした場合、排出量が57程度となるクリーンな化石燃料です。二酸化炭素の排出量が少なく、計画的な発電が可能な天然ガスを十分に確保することにより、脱炭素社会における安定的な電力供給を目指しています。
また、天然ガス市場を拡大するため、日本政府は先進国のみならずアジアを中心とする新興国の脱炭素化を支援している状況です。
カーボンリサイクルとは、二酸化炭素を資源として活用することを意味します。
現時点で、化石燃料は国民生活や経済発展のために必要であり、化石燃料の使用をゼロとすることは難しい状況です。カーボンリサイクルを推進することにより、二酸化炭素を排出量を抑えながら脱炭素化を実現できます。
カーボンリサイクルの主な意義は、下記の通りです。
カーボンリサイクルの具体的な事例には、「ポリカーボネート」「二酸化炭素吸収型コンクリート」などが挙げられます。
ポリカーボネートは、二酸化炭素を原料とした資材です。
二酸化炭素吸収型コンクリートは、混和材によって二酸化炭素を吸収するコンクリートです。二酸化炭素吸収型コンクリートをセメントの代替材として利用することで、コンクリート製造時の二酸化炭素排出を削減できます。
脱炭素社会に向けた動きは世界中に広まっており、2021年2月時点において120か国を超える国が「2050年カーボンニュートラル」を宣言しています。
下記では、アメリカ・中国・欧州連合(EU)の3つの国・地域における脱炭素社会への取り組みを紹介します。
アメリカでは、トランプ政権が2019年11月にパリ協定脱退を決定し、脱炭素化の潮流から離れる動きを見せました。しかし、州政府はパリ協定を支持する「米国気候同盟」を設立し、産業界も脱炭素化に向けた取り組みを推進しています。
また、バイデン政権は気候変動対策を最重要政策の一つと定めました。バイデン政権は、2035年には100%のクリーン電源、2050年にはカーボンニュートラルを目指すことを表明しています。よって、パリ協定への復帰もほぼ決定的な情勢です。
また、バイデン政権はグリーン関連への財政出動にも積極的です。EV普及・エネルギー技術開発などの脱炭素化産業に対し、バイデン政権は4年間で約200兆円投資することを公約しています。
中国も、脱炭素社会実現に向けた動きを見せている国です。
習近平国家主席は2020年9月の国連総会において、「2060年にカーボンニュートラル化を目指す」と表明しています。
また2015年に発表された「中国製造2025」では、重点戦略として「グリーン製造の全面的推進」を打ち出しています。特に、「省エネルギー・新エネルギー自動車(NEV)」や「電力設備」は、重点的に投資を行う分野に選定されています。
中国政府によるNEV推進政策の結果、中国はNEV販売台数で全世界の56%を占めるトップシェア国に成長しました。さらに、太陽光や風力発電への投資にも積極的であり、当該分野で世界をリードしています。
EUでは、2020年3月に長期戦略である「欧州気候法案」が提出され、「2050年までの気候中立(Climate Neutrality)」が決定されています。コロナからの復興を目指した総額1.8兆ユーロ規模の次期EU予算においても、37%を気候変動関連で執行する予定です。
また、二酸化炭素削減については、目標の引き上げを発表しています。欧州委員会は、2030年の二酸化炭素排出量を1990年比で55%とする目標です。
本目標を達成するために、省エネ・再エネ法、自動車排出規制などの関連法制の改定を2021年6月末までに実施するとしています。
脱炭素社会とは、二酸化炭素の排出を実質ゼロとする社会です。
二酸化炭素の排出量と吸収量を等しくすることが目標である「カーボンニュートラル」の考え方と同様に、近年世界で注目を集めています。日本でも、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするために、グリーン成長戦略などが策定されました。
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