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日本版エンロン疑惑の卸電力市場高騰の謎

2021.02.01

昨年末から、寒波襲来も重なって、折しも十年目を迎える東日本大震災直後に計画停電が行われて以来の「電力不足騒ぎ」が起きている。日本卸電力取引所(JPEX)では、取引価格が通常の20倍を超えるなど異常事態が続き、10万円を超える電気料金を請求される家庭が出たり、廃業や倒産に追い込まれる新電力も現実味を帯びている。

日本卸電力取引所(JEPX)とは、翌日の電気を30分単位で毎日取引する市場だ。昨年末から、そのJEPXで異常事態が続いている。通常、一キロワット時あたり10円程度が、100円や250円を超す日が続いている(図)。

 

 

この状況が長引くと、5年前に電力自由化が始まってから6百社超に増えた新電力の多くが、廃業せざるをえなくなる。新電力のほとんどは、大なり小なり、この取引所を利用しているからだ。

この異常事態に、国の動きは鈍い。10年前の東日本大震災以来の電力不足の危機の恐れがあるのに、当時とは異なって「事態を注視する」というばかりで、節電要請は未だに出されていない。

東アジア全体で液化天然ガス(LNG)の供給が不足ぎみで高騰していることが、大きな背景にあるようだが、せいぜい4〜5倍程度に過ぎない(図)。しかも日本への輸入価格が直接連動するわけではない(図)。

また暮れに襲った寒波のせいだという指摘もあるが、気温と取引価格はほとんど関係していないことが分かっている。そもそも、冬季の暖房や給湯の主力であるガス会社はまったく困っていないのだ。さらに「原発が再稼働していないからだ」とか「太陽光が増えすぎたからだ」といった声に至っては、まったく根拠のない無責任な「火事場泥棒」のような発言だろう。

真相究明は今後の調査が待たれるが、少なくとも大手電力会社が困っていないことは事実だ。自社の電源を豊富に持ち発電も小売りも8割超を占める大手電力会社は、市場に頼らずに電力供給できる事実上の独占状態のままだ。むしろ、自前の電源を自社の小売りに優先的に充てた上で一定の予備率を確保し、その「余り」を市場に出すという順序だから、困りようもなく、また電力不足が起きるわけでもない

だから、これだけ市場が高騰しても新規の電源を動かして供給する気配はなく、「見せかけの市場」は崩壊した。当面の緊急措置と原因究明を徹底的に行った上で、日本の電力市場と電力構造はゼロから見直す必要がある。

 

 



飯田哲也(いいだてつなり)エネルギー・チェンジメーカー 
国内外で有数の自然エネルギー政策のパイオニアかつ社会イノベーター。
京都大学大学院工学研究科原子核工学専攻修了。
東京大学先端科学技術研究センター博士課程単位取得満期退学。
ルンド大学(スウェーデン)客員研究員、21世紀のための自然エネルギー政策
ネットワーク(REN21)理事世界風力エネルギー協会アドバイザーなど国内外で
自然エネルギーに関わる営利・非営利の様々な機関・ネットワークの要職を務めつつ
国や地方自治体の審議会委員等を歴任。
「北欧のエネルギーデモクラシー」「自然エネルギー政策イノべーション」など著書多数。
1959年山口県生まれ


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